お元気ですか?草木染の糸屋さんの手しごと屋一福です。
今や化学染料でも出せない色はない時代。”なぜ草木染めをするのか?”というのを常に自分に問いかけながら染め物をしています。”おうちで簡単本格草木染め”講座での質問などをもとに、草木染の魅力と草木染初心者の人が染めやすい材料をまとめました。
”思いもよらない”の連続!草木染めの魅力
自然のパワーが色に宿る
”この植物からこんな色が出るんだ!”と新しい植物で染めてみたときは感動します。媒染(色止め)を変えたとき、植物を採る季節を変えたとき、染める場所を変えたとき、それぞれに色が変わり、予想が裏切られることもしばしば。
この間の教室でも、「鉄媒染をかけると茶色になると思います」と言い切った後、受講者さんが鉄媒染をかけるとモスグリーンに‼
一筋縄ではいかない驚きが、草木染めにはあります。
やわらかな色の魅力
化学染料も日々進化し、今や出せない色がありません。草木染のような複雑な色を化学染料で出すこともできます。それでも草木染めにこだわるのは”柔らかさ”を感じるから。特にビビッドな色を比べると、化学染料で染めたものはパキッとした色になりますが、草木染めにはどこか柔らかさがあります。
真っ赤に見えるようで青も黄色も含んでいるのが草木染の色です。
初めての草木染め、どんな植物材料で染める?
”長く色持ちさせたい”を考えなくてよければ、すべての草木が染料植物になります。身近な植物をミョウバンで色止めすると、ほとんどが黄色系に染まります。
おすすめ材料1:キッチンにあるもので染める
草木染初心者さんに私がよくおすすめするのが、”賞味期限切れのお茶”。紅茶でも構いません。ハーブティーはものによって色褪せが早かったりしますが、試してみるのもよいでしょう。
お茶と並んで染料として優等生なのが”玉ねぎの茶色い皮”。しっかり量があると、下処理のない木綿にもふんわりした黄色を染められます。
どちらも手に入れやすく、細かくするのが楽なので、いつでも染液が作れます。ほかにもニンジンの葉や栗の皮でも染められます。
おすすめ材料2:嫌われ者で引き抜かれてしまう雑草
夏、植物の勢いが増してくる頃にはため息も出ますが、「さて、どれで染めよう…」と私は思います。
すすき、オオオナモミ(ひっつきムシ)、アメリカセンダン草(ひっつきむし)ドクダミ、朝鮮朝顔、セイタカアワダチソウ、ヨモギ……。ペパーミントも黒ササゲも放って置くとジャングルになるため、適当に大きくなったら間引いて染めます。
柔らかな葉は細かくしやすいので、染液がとりやすいです。
おすすめ材料3:剪定した枝の葉
私の元には「剪定するから貰って!」とローズマリーなどのハーブが送られてくることがあります。必要以上に伸びたランタナもカットして染めます。梅やサルスベリ、ヤマモモなど、毎年必ず剪定するものは、ご近所に声をかけておくとよいでしょう。
ただ、剪定にはタイミングがあることや、枝を細かくするのが少し大変なので、草木染初心者には不向きかもしれません。剪定枝の葉っぱだけ集めて染めるのがおすすめです。
初心者は避けて欲しい植物材料
よく草木染の情報サイトで見かけますが、初めての方には不向きな材料があります。
コーヒー
コーヒーは布を下処理していなくてもよく染まります。が、それは豆を煎って炭状になっているために墨染に近いから。コーヒーかすをもう一度に出して染液が取れますが、やや油を含むのと、何より強い香りが漂うので、初心者は避けたほうが無難です。
ドクダミ
大変きれいな色が染まりますが、こちらも生のままやると匂いで倒れそうになります。そのため、ドクダミで染める時は、一度干してから煮出すとよいでしょう。
赤や紫の花びら・実・葉
美しい赤や紫の色を布に染める方法はありますが一般的ではありません。一般的な草木染の手順で赤や紫の花びらや葉を煮出しても、赤や紫にはほとんど染まらないのです。
ハイビスカスティーや赤しその灰汁はきれいな色に染まりそうですが、色褪せが早いです。
花びらで染めたいときには、ポットマリーゴールド(キンセンカ)がおすすめです。
身近な植物を材料にして草木染めを試してみましょう
私は草木染めをしていると、亡き染色の先生の「まぁ!素敵!素敵な色ね!」の声が聞こえてきます。私はこの声を聴きたいために草木染めをしているのかもしれません。染色の先生とは、本当にいろいろな植物を材料に草木染めを試しました。本格的な染料植物も試しました。
けれど、綾に越してきて”身近な植物でもいろいろと楽しい”というのに改めて気づいたのです。
あなたも、草木染めへの一歩を気軽に踏み出してみてください。